9月13日 生物学史研究会のお知らせ

2014年9月の生物学史研究会について、以下のとおりお知らせいたします。

生物学史研究会「小さな生き物、小さな博物学者――泉鏡花をめぐって」
日時:2014年9月13日(土)15:00~17:30
場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅
下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html

会場や配布資料の準備のため、下記のフォームよりご登録いただければ幸いです。
登録フォーム:http://bit.ly/1sW5pVu

今回の生物学史研究会では、「小さな生き物、小さな博物学者――泉鏡花をめぐって」と題して、お二方にご発表いただきます。前半は、数々の優れた鏡花論を発表されている日本文学研究者の金子亜由美さんに、関東大震災後の時代と鏡花文学のなかの動植物の形象をテーマにご発表いただきます。後半は、『折口信夫 独身漂流』(人文書院)、『荷風へ、ようこそ』(慶應義塾大学出版会、2009年度サントリー学芸賞)、『泉鏡花 百合と宝珠の文学史』(慶應義塾大学出版会)などの著作で近代日本文学の幅広い対象を研究・批評されている持田叙子さんに、生き物をとらえる小さな観察者という観点から鏡花の文学世界、鏡花の描く生物世界の魅力を語っていただきます。多くの皆様のご来場をお待ちしております。

[発表概要]
「一坪半の異界――泉鏡花と小さな生き物たち」
金子亜由美(早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学)
関東大震災後の泉鏡花は、震災時の東京の様子を報告するルポルタージュ等を含め、幾つかの小品を書いている。その中でも、「二三羽――十二三羽」(大一三・四)を取り上げ、震災以前に書かれた短編作品「楓と白鳩」(大一一・七)と比較しつつ、作中に描かれる動植物の形象を分析する。その上で、震災後、明治(あるいは江戸)の面影が消え、近代から現代へと本格的に時代の趨勢が移り変わっていく東京の中にあって、鏡花が自らの作品世界をどのように(再)構築しようとしていたかを考察する。

「小さな博物学者――うつむく視線」
持田叙子(國學院大学非常勤講師)
泉鏡花の作品には、くも、蟹、蛙など水や地を這う小生物、あるいはキノコや苔など地面に近い植物が印象的に出てきます。神秘と怪異の霧は、そこから湧きおこります。
このミクロな景観は、幼児がまずその低く小さな視線でとらえる原初のいのちに他な
らないのではないでしょうか。鏡花文学の怪異とは、小さな博物学者である子どもがいのちを感ずる。ミクロな世界から始まる――そんな問題を入り口とし、鏡花についてお話させていただきたいと存じます。

[文献]
泉鏡花「二三羽――十二三羽」
・『鏡花全集』、第二七巻、岩波書店、昭和一七年
・『鏡花短編集』、岩波文庫、昭和六二年
・青空文庫 http://bit.ly/1qQdlsI
泉鏡花「楓と白鳩」
・『鏡花全集』、第二二巻、岩波書店、昭和一五年
・近代デジタルライブラリー http://bit.ly/1vVTWqS
金子亜由美「夢の転機――「甲乙」における関東大震災の影響」『文芸と批評』一一巻四号(二〇一一年一一月)
持田叙子『泉鏡花――百合と宝珠の文学史』慶應義塾大学出版会、二〇一二年

よろしくお願いいたします。