2020年度(第33期) 科学史学校

2021年2月27日(土)の「科学史学会」は、オンライン(Zoom)で開催されました。

日時:  2021年2月27日(土)14:00〜16:00
講師:  株本 訓久 会員 (武庫川女子大学)
演題: 「岩橋善兵衛の望遠鏡」

寛政五年七月二十日、日本で最初の望遠鏡を用いた天体観望会が催された。この観望会で用いられたのが、江戸時代の最も有名な望遠鏡製作者の一人、岩橋善兵衛の製作した望遠鏡である。善兵衛は星宿・月齢・潮汐の早見盤『平天儀』を考案し、望遠鏡による観測成果に基づいて、天文書『平天儀圖解』を著した人物でもある。今回、本講演では岩橋善兵衛の生涯と望遠鏡、そして、善兵衛が日本の天文学に果たした役割について紹介する。

ーーーーーーーーーーーーーー
2020年4月25日(土)、6月27日(土)、8月29日(土)、10月24日(土)、12月5日(土)に予定していた科学史学校は、中止となりましたが、別日程での開催を調整中です。→2021年度に開催いたします。

2020年度(第33期)科学史学校

2020年4月25日(土)斎藤憲 会員(大阪府立大学名誉教授) ←2021年12月4日(土)に変更

「証明の発明と発展:ギリシャの数学の創始、発展から衰退まで」

ギリシャ数学なしに現代数学はありえません。ユークリッド『原論』は「証明」という概念を確立した歴史上最も重要な数学書です。アルキメデスとアポロニオスの高度な成果は、17世紀に微積分学と解析幾何(座標による幾何学)の基礎となりました。一方、ピュタゴラスが数学とは無関係なことは哲学史の常識です。誤った思い込みは根強いものがあります。近年の研究成果も交えて、ギリシャ数学の全体像をお届けします。

2020年6月27日(土)古谷紳太郎 会員(東京工業大学)←2021年4月24日(土)に変更

「古典論から量子論への転換はいかにして起こったか:科学史を通じて科学技術イノベーション政策を考える」

量子論はいかにして物理学の新しいパラダイムとなったのか。1900年にプランクが作用量子概念を提出して以後、1905年にアインシュタインが光量子仮説を論じ、1913年にボーアが半古典的原子構造論を提出したことから、一見すると量子論への転換はスムーズに進んだように思えるが、実際はどうだったのだろうか。本講演では、アインシュタインの固体比熱理論に注目して古典論から量子論への実際の転換過程を論じ、科学技術イノベーション政策の問い直しの機会としたい。

2020年8月29日(土) 横山尊 会員(九州大学大学院)←2021年8月28日(土)に変更

「日本の優生学史研究のこれからを考えるために」

2016年7月に相模原事件が起き、「優生思想」と告発する言論が相次いだ。18年1月に優生保護法の強制不妊手術をめぐる裁判があり、告発キャンペーン報道が相次いだ。19年4月の救済法成立は当然だった。しかし、その過程で生じた優生思想をめぐる語りには、研究史の成果に相容れない内容もあった。それらが今後の優生学史研究に及ぼす影響も懸念される。本講演は一連の動向を論評し、今後の学術的研究の発展に繋ぐ途を模索したい。

2020年10月24日(土) 栃内文彦 会員(金沢工業大学) ←2021年6月26日(土)に変更

「地質学者 坪井誠太郎が日本地質学界で果たした役割」

坪井誠太郎は、1920年代から50年代にかけて日本地質学界を主導する立場にあり、優秀な研究者を育てただけでなく、多くの研究者らによる学問的あるいはイデオロギー的な様々な論争・対立を促進した。演者は現在、日本地質学史研究に加え、技術者倫理教育に関する教育研究も行なっている。そこで本講演では、日本地質学界における坪井の影響を、技術者倫理(含む研究者倫理)の観点を踏まえて検討してみたい。

2020年12月5日(土) 江沢洋 会員(学習院大学名誉教授)←12月は中止となりました

「量子力学の100年」

量子力学の発見はいつだったのか。特定は難しいが,およそ 1920年代とすれば,今年はそれから100年といえなくもない.その程度の幅をもたせていえば、我が国で「研究」が始まった時が量子力学の始まりと重なっている.石原純,高嶺俊夫,木内政蔵らの論文は有名である。湯川秀樹が初めて論文を出したのは1935年,朝永振一郎は1933年である。量子力学のこの100年を振り返ってみることにする。