会長 あいさつ

2019年度― 木本忠昭

(2019年6月16日全体委員会 挨拶)
今期の会長を務めさせて頂くことになりました、どうぞよろしくお願いします。今後の学会のあり方や方針に簡単に述べご挨拶に代えさせて頂きたいと思います。

まず、当たり前のことで今更言うまでもないことですが、真っ先に強調しておきたいのは、科学史、技術史は本当に大切な学問であるということです。これがすべての原点になります。この大切な科学史技術史を発展させるには当面二つの柱があると思います。

一つは、どんなに大切かを対社会的文脈においても科学界全体の文脈においても歴史的に再確認し、現代では、科学史技術史研究者はどんな課題に直面しているかを明確にし、それらに取り組むことです。日本で科学史学会が生まれたのは軍国主義・戦争の時代でした。科学史似立ち向かった多くの方は、当時の、あの無謀で反人類的な戦争政策に批判的でした。残念ながら、彼らは時の強権に沈黙を余儀なくさせられました。しかし、戦後は、新生日本をめざして大変活発に活動し学問活動全般の振興に貢献しました。その後も、軍事と科学問題、原子力問題、平和問題等で多くの発言をし、公害環境問題でも科学史技術史研究者は重要な役割を果たしてきました。そして今日、私たちは、巨大科学や科学・技術と公衆の福祉や倫理、また平和目的が大前提であったはずの宇宙の軍事利用に象徴される科学・技術の軍事化傾向の強まり、そして科学史技術史研究者にも強く影響が及んでいる日本の大学と基礎研究の貧困化、落ち込みに直面しています。

大学での研究がどんなに落ち込んでいるかはノーベル賞受賞者の度々の発言があり、報道も多くあります。科学史でも同じです。ただ、我々の学問的使命として科学史技術史を増やせとだけ言っていくのはダメで、まず社会と科学界が直面している大学の貧困化問題を解決し、国立大学の研究費を増やさせるという中で、我々自身の科学史技術史研究も進展するのだと思います。

第二の柱として、科学史学会内部の活発な活動が必要です。いくつかの新しい取り組みを提案させて頂きたいと思います。

まず①全体委員会の運営を、報告などは事前文書提案でもっと実質議論できる形態にしたいと思います。東京以外の委員の方の意見も更に反映させる工夫も必要でしょう。

②次に、例えば、「原子力と科学史技術史」、「日本技術史科学史とアジア」、「ドイツ技術史と日本技術史」、「日本近代化と科学・技術の再検討」、「軍需と科学史」、「教育と科学史」等々 様々なテーマを自由に設定し数名から各自が自由に研究会・情報交換会を行う小研究組織を自由につくってあちこちで多くの活動ができる会に出来ないかと考えています。これまでのような学会誌購読、年会・支部大会・分会参加、科学史学校など以外に、会員同士が議論し、学会所属のメリットを享受できる場を増やしたいということです。大学等研究機関で研究できる研究者が減少している現状を放置すれば、科学史学会全体の研究能力が縮小しかねません。諸研究会もたとえば1980年代、90年代に比べて減っているのではないでしょうか。なんとか、議論や研究などが活発に行える学会にしたいものです。

③若手研究者育成や大学等でのポスト減少、高校歴史教育変化への対応対策、軍事傾向増大と日本の科学研究問題等々 、上記の最初の柱の、より学会に密に関わる問題、科学史技術史研究者が直面している諸問題への取組を積極的にしたいと思います。

4学会のインターネット・サイトは随分改善されてきましたが、さらに工夫したい。記事の遅れのほか、幾つか整備が必要ものもあるようです。今まで少数の方の非常な努力で維持されていると思いますが、増力は必要ないでしょうか。上記②の専用ページも作り、会員同士が呼びかけ合うことができ、また報告記事だけでなく、これから先何をするのだということがわかる、ホームページが、先導するとでもいうようなものにならないかということです。

5前期に起きた、あるいは取り組んできた諸問題のほか、ネット時代における運営や、倫理問題、選挙方法、新委員会の発足方法にも検討の余地があると思います。

どうぞご協力の程お願いします。ぜひ、自由闊達な議論の沸く魅力ある学会を一緒につくっていきましょう。