2020年11月5日 木本会長より報告

日本科学史学会会員の皆さんへ
 ――日本学術会議会員候補任命問題についての会長声明に関して—

                        2020年11月5日 会長 木本忠昭

 周知のように、政府は日本学術会議が日本学術会議法によって選んだ第25期会員候補105名のうち6名を任命せず、現在、法規定を満たせない状態にありますが、本問題について、10月11日付けで会長声明を発表しました(本web内にあります)。事前に本声明発表を知らなかったとの声がありますので、簡単に経緯を説明します。本会は残念ながら、会員の声を迅速に集約・伝達する手段を持ちませんので、現在のところは、各個別委員会や全体委員会などの組織段階での意志決定と、会員間の意思伝達にタイムラグが発生します。他学会でもある一般的なものですが、今後の改善課題であります。なお、工夫したいと考えます。

<発端>この学術会議問題会員候補任命「拒否」問題が新聞等で明らかになると、すぐに全体委員や総務委員から、大きな問題である・声明など何らかの対応が必要である、との意見が、個別的に、あるいは総務委員や全体委員会のメーリングリストに寄せられました。

<総務委員会段階>10月2日来、総務委員会内・会長間でのメール意見交換で、声明等発表の形態が幾つか提案され、対応について検討されました。最終的には、総務委員会の了承あれば→会長が全体委員会にメールで「会長声明を出したいが意見を求める、内容に関して注文があれば併せて出して欲しい」→賛成であれば、声明の原案を作成 →全体委員会に提示、時間のあり次第会長・総務で内容検討→全体委員会に提示,再度了承を求める→ ホームページ というプロセスを踏むことが了承されました。

 <全体委員会>

10月4日、会長から全体委員会にメーリングリストで、「声明を出したいこと。発信名は、学会名を使うのは総会が開催できないので無理、全体委員会名も時間的に難しいので会長名にしたい。声明内容の軸は、

1.日本学術会議法や憲法23条規定の精神に反する不当な政治介入である。6人拒否の撤回をもとめる。 

2.学術会議だけの問題にとどまらない学術全般に対する政治介入(となり)、学問界や国民生活に係わる問題で重大であるので是正すべき。」

として、声明発出の可否が問われた。

 寄せられた意見は、細部の意見はあったが、賛意のみであった。ついで、会長から、声明案が提示され、意見が求められた。

 以後、委員からの修正意見→第2次案→意見→第3次案→意見→と繰り返され、第4次案をもって成案とされた。この間、種々の意見が全体委員から出された。中には取り急いでの緊急対応だから簡単に、という意見や、逆に、歴史を踏まえて科学史学会らしさを出すべきという両者相容れがたい意見もあり、全てではなかったができるだけ取り入れるよう努めた。中には、細かい文法上のチェックも入れて頂くなど丁寧、真摯な取組を頂くなどもあり、第4次の成案は、全体委員の方々のご協力があって出来上がったものといえる。

 <公表>10月13日 webホームページに声明文をアップ。ネット上で急拡散、SNSでも賛意高く、15日にアクセス数急増。 以上の経過は、10月17日総務委員会(Zoom併用)、25日全体委員会(Zoom併用)で報告され、了承された。また、今後の対応については全体委員会に報告しながら相談することとした。

<人文社会系学協会との連繋>

 本問題について、他の人文社会系学協会で連繋するという参加の勧誘を、10月17日総務委員会で了承し、連絡代表者に佐野委員にお願いすることとした。

 10月31日佐野委員から、28日開催の人文社会系学協会連合連絡会からの報告が全体委員会になされた。同時に、態度決定として、

①11月6日の日本記者クラブでの共同声明発表会見に参加するか? ②参加形態は? ③参加名をどうするか? について問われた。全体委員からの回答メールでは殆どが、声明発出団体として参加する意向が示された。しかし、本学会の参加名については、会長声明に次いで二度目の声明になるので会長名より重い理事会等のカテゴリーで参加(即ち全体委員会の名で参加)するという意見もかなりあった。全体委員会名にするには、全体委員会の議が必要なので、全体委員会に代わるメール審議が会長より要請され、現在審議中です。

 なお、11月4 日18:30 現在で、人文社会系では114の学協会が共同声明に参加・賛同の意向を示しております。(今回の問題で声明を発している学協会は、理系を含め500以上です。)

<今後の予定>1161030分 日本記者クラブでの共同記者会見、会長が出席。

    (記者会見後、午後内閣府に要望書提出)

参加予定者は次の通りです。

宗教学:日本宗教研究諸学会連合委員長 島薗 進(上智大学 教授)
    心理学:日本心理学会理事長 坂上 貴之(慶應義塾大学 名誉教授)
    社会政策学:社会政策学会代表幹事 石井 まこと(大分大学経済学部 教授)
    歴史学:日歴協常任委員(前委員長)木村 茂光(東京学芸大学 名誉教授)
    文学:日本近代文学会運営委員長 佐藤 泉(青山学院大学文学部 教授)
    哲学:日本哲学系諸学会連合委員長 野家 啓一(東北大学 名誉教授)
    社会福祉学:日本社会福祉学会会長 木原 活信(同志社大学社会学部 教授)
    教育学:日本教育学会会長 広田 照幸(日本大学文理学部 教授)
    経済学:経済理論学会代表幹事 河村 哲二(法政大学経済学部 教授)
    科学史:日本科学史学会会長 木本 忠昭(東京工業大学 名誉教授)

以上
(2020年11月5日発信、11月6日一部修正)