日本科学史学会会長就任の挨拶
6月の総会で会長に就任して1か月が経ちました。この間、6月25日の全体委員会で各委員会への全体委員の所属が決まり、これから2年間の運営体制が決まりました。
この号で報告されているように、運営体制に大きな変更はありません。
はじめて運営に参加した私の印象は、現在の学会には多くの懸案があるが、迅速な対応は難しいということです。全体委員会は年数回しか開かれません。次回は10月15日です。
6月の全体委員会は予定時間を超過して3時間半ほど議論しましたが、すべての問題について十分な時間が割けたわけではありません。現状でも、1)研究倫理規定の整備、2)学術論文のオープンアクセス化によって予想される和文誌、欧文誌の売上減少、3)論文投稿から掲載までの時間をいかに短縮し、また著者に有益な助言をおこなうか、4)若手研究者の支援、など多くの懸案があります。全体委員会ではメーリングリストで随時議論をおこなっていますが、メールだけでは十分な議論は出来ず、重要な決定は会議の場でしかできません。
多くの懸案について、会員の意見を聞き、 十分な議論をし、しかも必要に応じて迅速な意志決定をしなければなりません。そのために全体委員がネット上で議論できるシステムの導入と、会員の意見や要望を集める態勢が必要です。これは次回の全体委員会で提案したいと考えています。
同時に学会の重要な機能は会員が出会って議論する場を提供することです。年会だけでなく、シンポジウムや小さな研究会など、発表・議論の場、そして学会に対する意見や提案を集める場を積極的に作っていきたいと思います。その最初の試みが、この号でご案内する10月8日開催の「若手研究者発表会・科学史授業セミナー」です。
また、長年学会を支えてきた、暗黙の「無償奉仕の文化」のために、学会の運営にかかわる人が限定されるという問題も感じております。一方で学会の財政はそれほど豊かではありません。これについては幅広い議論が必要ではないかと思います。
多くの懸案や要望を、すぐに解決することは難しいのですが、学会を取り巻く大きな状況の変化に対応し、会員の意見が反映される学会になるように努力していきます。
会員の皆さまのご意見とご助力、積極的な参加をお願いいたします。
(2017年7月28日発行『科学史通信』より)