2016年度(第29期)の科学史学校

※初掲載時に未定であった6月以降の会場が決まりましたので、修正してお知らせします。

2016年度(第29期)科学史学校のご案内

日本科学史学会では、一般の方を対象とした公開講演会「科学史学校」を開講しています。
全6回・聴講料は無料です。

期間:2016年4月~2017年2月
会場:日本大学理工学部駿河台校舎(4,6,8,10,12,2月)
*会場の建物名・部屋番号が回によって変わります。下記のプログラムにてご確認ください
時間:14時~16時
事前申し込み不要・参加費無料・自由参加

第28期プログラム
(日付・講師・演題・会場の順)

2016年4月23日(土)
講師: 田中 一郎 会員(金沢大学名誉教授)
演題:「ガリレオ神話を読み解く-ピサの斜塔と宗教裁判-」
会場:日本大学理工学部駿河台校舎1号館7階171会議室(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)

ガリレオ裁判については,これまで陰謀によって冤罪を被ったのだと言われてきた。しかし,当時の裁判記録を読むかぎり,そのような陰謀を示す証拠は見つからない。どのようにして冤罪説が作られ,語り継がれてきたのかを検討することにしよう。また,裁判直後に「それでも地球は動いている」とつぶやいたという逸話についても検討しておこう。これらが,宗教と対立しながら近代科学が成立したのだというわれわれの先入観を形作ってきたからである。

2016年6月25日(土)
講師: 杉本 舞 会員(関西大学)
演題:「コンピュータと「巨大頭脳」-エドモンド・バークリーによる啓蒙活動-」
会場:日本大学理工学部駿河台校舎1号館7階171会議室(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)

計算機と脳の類比は、計算機に関わる研究者のあいだで1940年代から1950年代にとくに流行した。ACM (Association for Computing Machinery)の創立者の一人で『巨大頭脳』の著者であるエドモンド・バークリーは、デジタル計算機の持つ「推論をする能力」に着目し、計算機と論理の関係性、また計算機の社会的意義に関する啓蒙活動を行った。本講演では、バークリーが重要視した論点を整理し、彼が数学者や工学者らの協力をどのように得ながら活動を行ったかについて論じる。

2016年8月27日(土)
講師: 柴田 和宏 会員(岐阜大学)
演題「フランシス・ベイコンの自然哲学とその背景」
会場:日本大学理工学部駿河台校舎5号館2階524教室(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)

フランシス・ベイコンは、物質や生命などの自然哲学上の問題について思索を重ね、まとまった分量の著作や草稿を残している。この「科学史学校」では、それらの内容を概観するとともに、彼の思想の背景に迫ってみたい。とくに、生涯の大部分を政治の世界のなかで過ごしたベイコンにとって、自然の研究がいかなる意味をもっていたのかという問題を検討する。

2016年10月22日(土)
講師: 高山 進 会員(三重大学名誉教授)
演題:「「沿岸域統合管理」の日米比較-なぜ大きく異なったのか-」
会場:日本大学理工学部駿河台校舎1号館7階171会議室(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)

広域であるが生態的にまとまりのある領域である沿岸域や流域は、さまざまな省庁、行政体によって分割管理され、かつ利害関係が複雑に錯綜している。日米両国で「環境管理」をめぐる考え方や政策が大きく異なった歴史的背景を踏まえ、かつ二つの湾(サンフランシスコ湾と伊勢湾)の具体的事例を取り上げ、「沿岸域という生態系の価値を高めることをベースに置いた統合管理」というあるべき形に向かう動きが、今日までどのように展開してきたのかを考察する。

2016年12月3日(土)日本大学理工学部駿河台校舎5号館2階524教室
講師: 永島  会員(立命館大学)
演題「戦後日本鋳物産業の技術形成」
会場:日本大学理工学部駿河台校舎5号館2階524教室(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)

鋳物産業をはじめとする基盤的技術産業の技術力は日本機械工業の国際競争力の技術ようし的な基盤である。このような評価は90年代以降の議論において広く受け入れられているが、高度成長期に行われていた議論では、鋳物産業の技術は「停滞」しており、機械工業の「足枷」となっていると評価されていた。本報告では、戦後日本の産業発展のなかで中小企業が多く関わる鋳物産業が、いかにして高い技術力を形成したのかについて明らかにする。

2017年2月25日(土)
講師: 溝口 元 会員(立正大学)
演題:「忠犬ハチ公、軍用動物と戦時体制-動物文化史の観点から-」
会場:日本大学理工学部駿河台校舎「1号館」7階171会議室(JR御茶ノ水駅より徒歩3分)

渋谷駅前銅像はもとより、剥製標本が国立科学博物館に、病理解剖後の臓器が東京大学農学博物館に残されている秋田犬ハチ(1923~1935)が「忠犬ハチ公」として社会的名声・存在となった背景を、1.日本犬天然記念物第1号、2.靖国神社の軍馬、軍鳩、軍犬像にも見られる戦時下の使役・軍用動物との関係、3.「修身」教科書の教材となった戦時体制下、天皇制に繋がる「忠義」、日本人の心性、の3点から検討した結果を話題としたい。